フランスのスラム(ポエトリー・リーディング)アーティスト、Grand Corps Maladeの最新アルバム

(UPDATE )

昨年10月リリースの5thアルバムが(ようやく日本でも)配信スタート

Grand Corps Malade – L’heure des poètes – Clip Officiel

フランスのアーティスト、Grand Corps Malade(グラン・コール・マラード/GCM)の昨年秋に発表された最新アルバム『Il nous restera ça』。
日本国内で利用できるストリーミングサービスでは長らく未配信だったのですが、6月17日に3曲を追加した再編版『Il nous restera ça (Réédition)』として、Apple Musicでの配信がスタートしました。

グラン・コール・マラードは「スラム(Slam)」と呼ばれる、一種のポエトリー・リーディングによる表現活動を行うアーティスト。

80年代のアメリカで誕生した、決められた時間内で自作の「詩」を朗読して表現を競い合う一種のパフォーマンス・アートの競技会「ポエトリー・スラム(Poetry Slam)」がフランスに伝わり、現地の文化と融合して独自に発展したものが「スラム(Slam)」。
「スラム」は詩の朗読によるパフォーマンスや作品そのものを表す言葉として広がっていき、フランスならではのシャンソン的な「歌詞」を大切にする文化や、ストリートミュージシャン的な表現スタイルなどが融合した、ひとつの音楽ジャンルとして進化していきました。

本来の意味である、詩の朗読バトルのこともフランスでは「Slam」と呼ばれています。「ポエトリー・スラム」の文化は世界中に広がっており、日本でも大会が開かれているそうです。

その、音楽ジャンルとしての「スラム」の存在をフランス中に知らしめた第一人者が、グラン・コール・マラード。

グラン・コール・マラードのこれまで

1977年、パリ郊外Seine-Saint-Denisに生まれたグラン・コール・マラード(本名:Fabien Marsaud)。
もともとスポーツ選手を目指していた彼は、1997年に水泳の飛び込み事故により脊椎を損傷。
脚が不自由になった彼は、「病んだ大きな体」(彼は190cmを超える長身)を意味する「Grand Corps Malade」の芸名で、表現活動を始めます。

アカペラ、もしくはピアノやヴァイオリンなどによるジャズ的な演奏をバックに、独特の低くはっきりとした声で詩を朗読するスタイルを確立し、2006年に発表したファーストアルバム『Midi20』が、フランス国内で50万枚以上の大ヒット。ヴィクトワール音楽賞も受賞し、一躍スラムの代表アーティストとして知られることになりました。

現在までに5枚のアルバムを発表しています。

最新作『Il nous restera ça』について

Grand Corps Malade & L.E.J. – Pocahontas Remix (Video)

最新作『Il nous restera ça(私たちにはそれが残るだろう)』は、グラン・コール・マラードが、様々なアーティスト(シンガーソングライターからラッパー、小説家、俳優まで)にアルバムのテーマに沿った詩と曲を依頼して作り上げた、一種のプロジェクト的な作品。参加アーティストたち自身が朗読、あるいは歌っており、合間にグラン・コール・マラードのスラムが挟み込まれるような形式になっています。

参加アーティストの顔ぶれが豪華で、大歌手シャルル・アズナブール(Charles Aznavour)、ロック歌手ルノー(Renaud)、シンガーソングライターのジャンヌ・シェラル(Jeanne Cherhal)、若手の女性スラム歌手であるリュシオル(Luciole)など。
今回配信がスタートした『Réédition』版に追加収録された「Face B」にはこれまた大御所の女性歌手ヴェロニク・サンソンが参加。
同じく追加収録の「Pocahontas」Remixバージョンでは、昨年「Summer 2015」をフランスで大ヒットさせた女性3人組コーラスグループL.E.J.(エリジェイ)をフィーチャー。

というわけで、現在のフランス音楽シーンの深さや面白さが伝わるという意味でも、非常に興味深い内容になっています。

こちらの参加アーティスト紹介映像の時点でもうおっそろしくカッコイイので是非。

Grand Corps Malade – le 23 octobre, il nous restera ça

グラン・コール・マラード、ファースト・アルバムの時は日本でもいくつかのメディアや外資系レコードショップなどで取り上げられていた記憶がありますが、最近はほとんど情報が入ってこなくなっているため、あらためてご紹介しました。

本当はこういうジャンルはしっかり言葉の意味まで理解して聴けるのが一番ですが、単純に音楽のみで聴いても素晴らしい作品ばかりです。
彼の独特の低音ボイスには、言葉の意味がわからなくとも心に響く何かがあるはずです。
最近日本でもテレビ番組をきっかけに、フリースタイルのラップが一般層にも注目されてきていますが、同じ「言葉によるパフォーマンス」の一つのスタイルとして、ラップやヒップホップに興味がある人も、聴いてみるときっと面白い発見があるのではないでしょうか。

最後に過去の作品からおすすめをいくつか。

Grand Corps Malade – Funambule (Clip officiel)

2013年の4thアルバム『Funambule(綱渡り)』タイトル曲。

Grand Corps Malade – Au Théâtre (Clip Officiel)

2013年の4thアルバム『Funambule(綱渡り)』から。

Grand Corps Malade – Je Viens De Là

2008年の2ndアルバム『Enfant de la ville(街の子ども)』からのシングル曲。

豆知識1
スラムといえば「スラム街」を思い浮かべる人が多いかと思いますが、綴りが違う別の単語です。スラム街のスラムは「Slum」、詩の朗読のスラムは「Slam」。「Slam」はもともと英語で「打つ」「(ドアなどを)バタンと閉める」「(ゲームで)完勝する」みたいな意味だそうで、あの「スラムダンク(SLAM DUNK)」のスラムもこっちです。
豆知識2
参照元記事の文中に出てくる「ACI」はフランス語の「Auteur-compositeur-interprète」(オトゥール・コンポジトゥール・アンテルプレート)の略で、意味は「作家・作曲家・演者」というわけで、自分で作詞作曲して歌う、いわゆる「シンガーソングライター」のこと。

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