11年ぶりの来日公演決定!カエターノ・ヴェローゾ 初心者向け入門ガイド

(UPDATE )

大阪での単独公演+東京でのジャズ・フェスティバル出演

Caetano Veloso – Desde Que O Samba É Samba

先日のリオデジャネイロオリンピック開会式にも登場して話題になった、ブラジル音楽の超大物アーティスト、Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)が日本にやって来ます。

当初は2016年10月7日から9日にかけて東京・恵比寿ザ・ガーデンホールで行われる「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2016」への出演のみが発表されていましたが(カエターノは9日に出演)、先日追加で大阪での単独公演(10月5日)が決定したとのニュースが入りました!素晴らしい!

2005年以来、約11年ぶり4度目となる今回の来日公演、とにかく貴重な機会です。
少しでもブラジル音楽に興味があるなら、絶対に損はしないので観に行くことをおすすめします。

全然ブラジル音楽やカエターノのことを知らないという人でも、ジャンルにとらわれず「良い音楽」を探しているなら絶対にチェックする価値のあるアーティストです。

というわけで、まだカエターノ・ヴェローゾのことをよく知らない方、リオ開会式でちょっと気になったという方、大物が来日するならとりあえず観てみたいという方…などなど初心者の方向けに、ざっと簡単に(しっかり書くと本が一冊出来上がってしまうくらいの人なので本当にざっと簡単に)彼の歩みとおすすめ作品をご紹介します。

わかりやすさ重視でいろいろと端折ってますので、すでに詳しい方には物足りないかと思いますが…あらかじめご了承くださいませ…!

ひとことで…カエターノ・ヴェローゾとは!?

ブラジル北東部バイーア州出身の男性シンガーソングライターです。

バイーアはその歴史上アフリカから渡ってきた人が多く、黒人文化の影響が強く残る地域で、ブラジルならではの豊かな音楽文化を生み出す土壌となっています。サンバもバイーアが発祥の地だと言われており、また「ボサノヴァ」の創始者の一人であるジョアン・ジルベルトもバイーア出身のミュージシャンです。

誕生日は1942年8月7日。2016年現在74歳にして今も現役で精力的に活動しています。

最新アルバム(スタジオ録音盤)は2012年の『Abraçaço(アブラサッソ)』。2014年にはライブアルバム『Multishow ao Vivo Caetano Veloso Abraçaço』もリリース。1967年のデビュー以来、ライブ盤、共演盤なども含めてこれまでに50枚以上のアルバムを発表しています。

ジャンルは「MPB」と呼ばれるブラジルならではのポップ・ミュージック。

「MPB(エミペーベー)」は「Música Popular Brasileira(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)」の略で「ブラジルのポピュラー音楽」の意味。単なる大衆向けポップスとはちょっと違って、1960年代に当時の若者世代を中心にして創りだされた「新しいブラジル音楽」のこと。サンバなど伝統的なブラジル音楽の要素を根っこに持ちながらも、英米のロック・ポップスなどの新しい要素を取り入れて発展していったジャンルです。

カエターノ・ヴェローゾの歩み

Caetano Veloso – Terra

1978年のアルバム『Muito』収録の名曲。1998年のライブ映像(DVD『Prenda Minha』より)です。

故郷バイーアの大先輩であるジョアン・ジルベルトに大きな影響を受け、ボサノヴァをベースにしたスタイルで、1967年にデビューしたカエターノ・ヴェローゾ。

デビューアルバム『Domingo(ドミンゴ)』は同じバイーアの女性歌手ガル・コスタとの共演盤。青春の香り漂うボサノヴァ・アルバムです。

しかし当時、世界の音楽シーンではビートルズを中心に革新的なロックが花盛り。刺激を受けたカエターノは、音楽仲間たちとともに、ブラジル音楽にロックや実験音楽などの新しい要素を取り入れる試みを始めます。その動きは音楽以外の芸術家たちも巻き込んだ一種のムーブメントとなり「トロピカリア(もしくはトロピカリズモ)」と呼ばれました。

そんなトロピカリスタ(トロピカリア運動家)たちの活動は、当時のブラジルの軍事政権に「反政府的である」と目をつけられ、1968年に身柄を拘束されたカエターノは、翌年からロンドンへ亡命を余儀なくされることに。

ロンドンへの亡命中も、当時のブリティッシュ・ロックやフォーク、レゲエなどの影響が感じられる2枚のアルバム(1971年の『イン・ロンドン』と1972年の『Transa(トランザ)』)を発表しています。

1972年にブラジルに帰国したカエターノは、より内省的で前衛的な作風を推し進めていきます。
70年代後半からは、ファンクやソウルなどのブラック・ミュージック的なスタイルに接近。また、バイーアの伝承音楽の要素も積極的に取り入れるようになります。
ヒット曲も多数生まれ、人気アーティストとしての地位を確立した80年代以降は、ブラジル国外にもその名が広まり、世界ツアーも実現。
1989年にはアメリカの先鋭的アーティスト、アート・リンゼイがプロデュースを手がけたアルバム『Estrangeiro(エストランジェイロ)』が大きな話題となりました。

90年代以降は、いよいよ歌手としての円熟を見せながら、ライブ活動と並行した、よりテーマ性のあるコンセプチュアルな作品づくりを行うようになっています。

スペイン語の曲を集めたカバーアルバム(1994年の『Fina Estampa(粋な男)』)で南米におけるブラジルの特異性(南米ではブラジルのみがポルトガル語を話す国で、他はスペイン語)を浮き上がらせてみせたり…
英語の曲を集めたカバーアルバム(2004年の『A Foreign Sound(異国の香り)』)でアメリカ文化との関係を描いてみせたり…
息子世代のロック・バンドを率いて硬派なオルタナティブ・ロック・アルバム(2006年の『Cê(セー)』)を制作してみたり…

激動の60年代・70年代を経て、洗練と円熟を身にまといながらも、常に刺激的で新しい創作活動を続けてきたカエターノ・ヴェローゾの歩みは、そのままブラジル音楽革新の歴史と言えるほど。

Caetano Veloso – Livros

1997年のアルバム『リーヴロ』より。

どこから聴いても面白いですが、一通り流れを知っておくとより楽しめるはず。

続いては、そんな様々な面を持つカエターノの魅力を、3つのテーマに絞っておすすめ作品とともにご紹介します。

1.甘い歌声~ボサノヴァの香り

コアなブラジル音楽ファン以外にも、最もわかりやすく伝わりやすいカエターノの魅力といえば、やはりそのジェントルで甘い歌声(前回2005年の来日公演の時のチラシにも「ボサノバの貴公子」やら「最高の癒し系シンガー」なんて書かれてた記憶…)。
もともとジョアン・ジルベルトのボサノヴァに大きな影響を受けている人なので、ギター一本での弾き語りはまさに真骨頂。極上の味わいです。

おすすめ作品は、1986年に発表されたアメリカ録音のアコースティックアルバム『Caetano Veloso』。自身の代表曲の数々やカバー曲(マイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」まで!)を、シンプルで美しいギターの弾き語り(+ちょっとだけ打楽器etc.)で聴かせる人気作です。

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2.先鋭・前衛・実験性

カエターノを語る上で絶対に避けて通れないのが、とどまることのない実験精神。現代音楽などにも影響を受けたカエターノは、70年代からミュージック・コンクレートやサウンド・コラージュなどを用いた作品や、自身の「声」によるミニマルな表現を追求したような作品も多数発表しています。

おすすめは、そんな実験性がボサノヴァ時代の残り香と溶け合い静かな美しさを漂わせる1975年の『Jóia(ジョイア)』。

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もっともっと実験サウンド全開な作品を聴きたい方は、1973年の『Araçá Azul(アラサ・アズール)』を是非。

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3.芳醇なバイーアの音楽性

ブラジルの中でも特に音楽の「名産地」として名高いバイーア。黒人奴隷たちによって持ち込まれたアフリカ文化の影響が強く残る、バイーアならではの豊かな伝統音楽の要素を、カエターノは積極的に作品に取り入れています。
打楽器部隊による躍動するリズムから、同郷の先人たちが築いてきたサンバ~ボサノヴァの歴史まで、全てを飲み込んだめくるめくサウンドが展開される1997年の名盤『Livro(リーヴロ)』は必聴!

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まとめ

以上、本当はこれでは全然書き足りないのですが…ひとまず興味を持った方は、そこから自分で調べて知っていくのも楽しみかと思いますので、この辺で。ネット上にも沢山の情報がありますし(いつの間にかウィキペディアにアルバム個別のページが出来てて驚愕!)、関連書籍もいろいろと出ています。

▼書籍ではカルロス・カラード著「トロピカリア」が超おすすめ。

今回の来日公演、大阪公演の特設ページを見たところ「Voz e Violão」(声とギター)と書かれている、ということは……おそらく弾き語り?あるいはシンプルなアコースティックでのライブになる予感。
カエターノの弾き語りは完全に至福なので、期待しかありませんね!

次世代サンバの歌姫として人気のテレーザ・クリスチーナ(Teresa Cristina)も共演予定とのことで、こちらも楽しみです。

チケットのご用意、お忘れなく!

追記:10月5日の大阪公演を観てきました。レポートはこちら。
【ライブレポート】カエターノ・ヴェローゾ来日公演 2016年10月5日 NHK大阪ホール

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