フレンチ・ボッサのポーリーヌ~Pauline Crozeの最新作『BOSSA NOVA』が夏に涼しい

(UPDATE )

国境も時代も超える新しい波…

Pauline Croze – Voce Abusou (session acoustique)

フランスの女性シンガーソングライター、ポーリーヌ・クローズ(Pauline Croze)の4枚目のアルバムとなる新作『BOSSA NOVA』(5月27日発売)は、そのタイトルのとおりボサノヴァ・カバー集。
ポイントは、とても「フランス的な」選曲になっているところ。

ボサノヴァはもともと1950年代にブラジルで生まれた音楽ですが、1960年代以降フランスでも流行し、フランスのミュージシャンたちによるフランス独自のボサノヴァも多く作られるようになりました。また、フランスのポップスにもボサノヴァ的な要素が自然に取り入れられるようにもなっています。

ポーリーヌ・クローズの『BOSSA NOVA』は、そんな「フランスにおけるボサノヴァ」の歴史を詰め込んだような内容になっており、ボサノヴァがフランスで流行するきっかけとなった往年のヒット曲から、フランスのミュージシャンが本家ブラジルの大御所と交流して生まれた名曲、さらにはフランスの若い世代によって作られた新しいフランス流ボサノヴァまで、幅広いのに不思議な一貫性のある選曲。
フランスのアーティストにしかできないボサノヴァ、を目指した感じが好印象です。

サウンドも正統派のシンプルでミニマルなサンバ要素とギターの和音の響きを基本にしつつ、現代的なエレクトロニックな装飾もさりげなく加えられた、聴きやすく新鮮味もある心地良い音。
筆者は基本ブラジル音楽至上主義者なので、ブラジル人以外のボサノヴァは「なんか違う」と感じてしまうことのほうが多いのですが、これは良かった!

というわけで簡単に内容をご紹介します。

1. La rua Madureira

イタリア生まれで1960年代からフランスで活躍した、ダンディでモッドな男性シンガーソングライター、ニノ・フェレール(Nino Ferrer)の1969年の隠れ名曲。

2. Tu verras

フランスのシャンソン歌手、クロード・ヌガロ(Claude Nougaro)が1978年にヒットさせた曲で、ブラジルのサンバ歌手シコ・ブアルキ(Chico Buarque)が1976年に発表した名曲「O que será(ウ・キ・セラ)」のフランス語によるカバー。

Pauline Croze – Tu verras

3. Les eaux de mars

フランスのシンガーソングライター、ジョルジュ・ムスタキ(Georges Moustaki)の1973年のヒット曲。ブラジルの「ボサノヴァの父」、アントニオ・カルロス・ジョビン(Tom Jobim)の名曲「3月の水(Águas de Março)」のフランス語カバーです。

4. Essa moça tá diferente (avec Flavia Coelho)

ブラジルのサンバ歌手シコ・ブアルキ(Chico Buarque)の1969年のヒット曲。リオ出身でパリで活動するブラジル人歌手フラヴィア・コエーリョ(Flavia Coelho)との共演です。

5. Você abusou

ブラジル・バイーアの2人組、アントニオ・カルロス&ジョカフィ(Antônio Carlos et Jocáfi)が作り、多くの歌手によって歌われている名曲。フランスでは1972年に歌手のミシェル・フーガン(Michel Fugain)が「Fais comme l’oiseau(鳥のように)」のタイトルでカバーしています。

Pauline Croze – Voce Abusou

6. Samba saravah

フランスの音楽家ピエール・バルー(Pierre Barouh)が、1966年の大ヒット映画『男と女(Un homme et une femme)』の劇中で歌った名曲。原曲はブラジルの詩人であり歌手のヴィニシウス・ヂ・モライス(Vinícius de Moraes)とギタリストのバーデン・パウエル(Baden Powell)による「Samba da Bênção」。
外交官の仕事もしていたヴィニシウス・ヂ・モライスは、1960年代にフランスに赴任した際に、ピエール・バルーやフランシス・レイ(『男と女』のサウンドトラックを担当した音楽家)ら現地のミュージシャンたちにブラジル音楽を教え、それがフランスで独自のボサノヴァ(「Bossa Française/ボッサ・フランセーズ」などと呼ばれたり…日本風に言うと「フレンチ・ボッサ」)が発展するきっかけにもなったようです。

Pauline Croze – Samba Saravah (session acoustique)

7. Chorando sim (avec Bruno Ferreira)

ブラジルの作曲家アルメイヂーニャ(Almeidinha)による1964年のフランス/イタリア映画『リオの男(L’Homme de Rio)』の挿入歌。

8. Jardin d’hiver

2000年に大ヒットしたフランスの歌手アンリ・サルヴァドール(Henri Salvador)のアルバム『Chambre Avec Vue』収録曲で、当時まだ20代の新人ミュージシャンだったバンジャマン・ビオレ(Benjamin Biolay)とケレン・アン(Keren Ann)による共作。
意表をついたレゲエ風のアレンジになっているのが面白いです。

9. À felicidade (avec Vinícius Cantuária)

1959年に大ヒットしたフランス人監督マルセル・カミュの映画『黒いオルフェ』で使われたアントニオ・カルロス・ジョビン作の名曲。
ブラジル人シンガーソングライターのヴィニシウス・カントゥアリアとの共演です。

Pauline Croze – A Felicidade (session acoustique) ft. Vinícius Cantuária

10. La fille d’Ipanema

1962年に全世界で大ヒットしたボサノヴァの定番「イパネマの娘(Garota de Ipanema)」のフランス語カバー。フランスのジャズ・シンガー、サッシャ・ディステル(Sacha Distel)の1964年のバージョンが基になっています。

11. La chanson d’Orphée (manhã do carnaval)

9曲目と同じく映画『黒いオルフェ』から。ブラジル人ギタリストのルイス・ボンファ(Luiz Bonfá)が作り、数多くのアーティストによって歌われている名曲です。

Pauline Croze – La chanson d’Orphée (Manha Do Carnaval) [session acoustique]

ポーリーヌ・クローズについて

ポーリーヌ・クローズ(Pauline Croze)は1979年5月4日生まれのフランスの女性シンガーソングライター。
2005年のデビューアルバム『Pauline Croze』が高評価を得て、ヴィクトワール賞(フランス版グラミー賞とも呼ばれるフランスの音楽賞)にもノミネートされるなど、大きな注目を集めました。
アコースティックなフォークロック調のスタイルで聴かせるクールな歌声と、ショートカットが似合う(いかにもパリっぽい)ルックスで、日本でも外資系レコードショップなどではそれなりに話題になった記憶が。

その後、『Un bruit qui court』(2007年)と『Le Prix de l’Eden』(2012年)の2枚のアルバムを発表。ロック色が強まったり、ワールドミュージック的な要素を取り入れたり。

そして今回、約4年ぶりとなる新作『BOSSA NOVA』を2016年5月27日にリリース。YouTubeのVEVOチャンネルもオープンしました。
VEVOチャンネルではアルバムの多くの曲がフルで視聴できる他、収録曲のアコースティック・セッションによる別バージョンの映像も多数公開されています。

AppleMusicでも配信中。

ジャケットも昔のレコードの復刻版みたいなデザインで楽しいですね。
この夏のお供に是非!

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