【特集】リオ五輪開会式で使われた曲と出演アーティスト総まとめ

(UPDATE )

はじまりました、リオデジャネイロ・オリンピック!
音楽大国ブラジルでの開催ということで、8月5日に開催された開会式は、期待どおりブラジル音楽の素晴らしさにあふれたものでした。
特に、世界でもよく知られているようないわゆる定番ジャンル(サンバやボサノヴァ)だけではない、現在進行形のブラジル音楽シーンの面白さをしっかり取り込んだ構成になっていたのがお見事で、音楽好きなら誰もが興味をひかれる内容だったのではないかと思います。
開会式で歌われた曲、出演したアーティストについて、もっとよく知りたい!あの曲よかった!あれは誰!?という方のために情報をまとめておきます。

オープニングは「Aquele Abraço」~リオはいつまでも美しい

波の音とともにリオの映像が映し出されるオープニングで流れ出すのは、Gilberto Gil(ジルベルト・ジル)の名曲「Aquele Abraço(アケリ・アブラソ)」。1969年にシングルとして発売され、歌詞はリオの美しさを讃えたもの。当時、影響力の大きなアーティストとして軍事政権にマークされていたジルベルト・ジルが、ロンドンに亡命するためリオを離れることになった際に作った曲だそうです。

Aquele abraço – Gilberto Gil(2004年のライブ・バージョン)
「Aquele Abraço」は、2012年のロンドン・オリンピックの閉会式でも、マリーザ・モンチとセウ・ジョルジによって歌われました。
Aquele Abraço by Marisa Monte & Seu Jorge RIO 2016 – YouTube

真夏のサンバが始まる

場面が暗くなると、静かに「Samba de Verão(サンバ・ヂ・ヴェラォン)」のメロディが流れ、ダンサーたちによるパフォーマンスが始まります。
「Samba de Verão」は Marcos Valle(マルコス・ヴァーリ)作曲による1964年の楽曲で、ボサノヴァの定番として多くのアーティストによって録音されています。日本でも英語版の「Summer Samba(サマー・サンバ)」あるいは「So Nice」のタイトルでよく知られています。
Marcos Valle | Samba de Verão (Marcos Valle / Paulo Sérgio Valle) – Instrumental SESC Brasil – YouTube

国歌を歌ったのはパウリーニョ・ダ・ヴィオラ

国旗掲揚にあわせてストリングスをバックにギターを弾きながらブラジル国歌を歌ったのは Paulinho da Viola(パウリーニョ・ダ・ヴィオラ)。

Paulinho da Violaは、1942年リオデジャネイロ生まれのサンバ歌手(シンガーソングライター)で、ショーロの影響を強く感じさせる洗練されたメロディと、ジェントルな歌声で上品に聴かせるサンバが魅力。
老舗サンバ・チーム「ポルテーラ(Portela)」に所属し、数多くの名曲を生み出しています。中でもポルテーラを讃えた1970年の「Foi Um Rio Que Passou Em Minha Vida(私の人生に流れる川)」が有名です。

Paulinho da Viola – Foi Um Rio Que Passou em Minha Vida – YouTube

ジェット機のサンバでリオに着陸!

リオ上空を飛んで廻る映像のプロジェクション・マッピングのバックで流れていたのが、「Samba do Avião(ジェット機のサンバ)」。ブラジルを代表する偉大な音楽家でボサノヴァの創始者の一人でもある Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)の1962年の作品です。
空港に着陸する飛行機の窓から見下ろす懐かしいリオの風景に心がサンバを踊り出す、という素敵な歌詞。

Tom Jobim – Ao VIvo em Montreal – Samba do avião – YouTube

ジョビン自身による1986年のモントリオールでのライブ映像。Tom Jobim(トム・ジョビン)はアントニオ・カルロス・ジョビンの愛称で、作品によっては芸名(アーティスト名義)もトム・ジョビンになっているものがあります。

ボサノヴァの定番「イパネマの娘」

続けてブラジル人スーパーモデル Gisele Bundchen(ジゼル・ブンチェン)のステージ・ウォーキングにあわせて歌われたのは、同じくアントニオ・カルロス・ジョビンによって1962年に作られたボサノヴァの名曲「Garota de Ipanema(イパネマの娘)」。
「イパネマ」はリオにあるビーチの名前。浜辺を歩く美しい少女の姿を歌ったといわれる歌詞はヴィニシウス・ヂ・モライスによるものです。

アメリカ人ジャズ・ミュージシャンのスタン・ゲッツが、ブラジルのジョアン・ジルベルトと共演したアルバム『Getz/Gilberto』(1963年)で録音された、当時のジョアンの妻・アストラッド・ジルベルトが英語詞で歌ったバージョンが世界的に大ヒットしました。
Astrud Gilberto & Stan Getz ◊ The Girl From Ipanema ◊ 1964 – YouTube

ピアノを弾いて歌っていたのは、アントニオ・カルロス・ジョビンの孫のDaniel Jobim(ダニエル・ジョビン)。彼自身も素晴らしいミュージシャンであり作曲家です。

ファンキ!ルヂミラの「Rap da Felicidade」

優雅なボサノヴァから一転、強烈にカラフルな映像とエレクトロニックなファンキのビートが炸裂し、白い衣装のダンサーたちが踊り出します。そこで登場するのが女性ファンキ歌手 Ludmilla(ルヂミラ)。
歌っていたのはファンキ・カリオカのクラシック、Cidinho&Doca(シヂーニョ&ドカ)1994年の名曲「Rap da Felicidade」。

Cidinho & Doca – Rap da Felicidade – YouTube

Cidinho&Docaは90年代から活動しているリオデジャネイロのラップ・デュオ。

Ludmillaはリオデジャネイロ出身のファンキ歌手で、インディーズ時代はその名も「MC Beyonce」という名前で活動していました。2014年にメジャーデビューし、シングル「Hoje(今日)」が大ヒット。今やファンキ・メロディ(ポップな歌ものファンキのこと)を代表する人気歌手となっています。

Hoje (Clipe Oficial) – Ludmilla
ファンキ・メロディについてはこちらの記事もご覧下さい。
【夏にぴったり】バイリ・ファンキだけじゃない!ブラジルの「歌ものファンキ」のすすめ

エルザ・ソアレスの「オサーニャの歌」

さらにサウンドがダブステップ風に展開して、御年79歳にして今なお現役のサンバ・ソウルの女王 Elza Soares(エルザ・ソアレス)登場!迫力ありすぎ。

歌っていたのは「Canto De Ossanha(カント・ヂ・オサーニャ)」。バーデン・パウエルとヴィニシウス・ヂ・モライスによるアフロ・サンバの名曲で、多くのアーティストがレコーディングしています。

Canto de Ossanha (Baden Powell – Os Afro-Sambas)

ゼカ・パゴヂーニョとマルセロD2によるサンバ・ヒップホップ

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PHOTO: Zeca Pagodinho / Facebook

再びファンキ的なダンスパフォーマンスを挟んで、ビートがヒップホップ調に展開。カヴァキーニョの音色が聞こえてくると、Zeca Pagodinho(ゼカ・パゴヂーニョ)とMarcelo D2(マルセロ・デードイス)の登場です。

Zeca Pagodinhoは、サンバの中でも特に人気のある「パゴーヂ(Pagode)」と呼ばれるジャンル(少人数で演奏されるポップなサンバ)のスーパースター。歌ったのは、2002年のワールドカップの時に大ヒットした代表曲「Deixa A Vida Me Levar(人生の流れに身をまかせよう)」。そこにD2のラップが絡んでいきます。

Zeca Pagodinho – Deixa A Vida Me Levar

Marcelo D2は、サンバとヒップホップを融合させ、ブラジルならではのヒップホップスタイルを作り上げたアーティストの一人。元々はPlanet Hempというミクスチャーバンドで活動していました。2003年のアルバム『À Procura da Batida Perfeita(完璧なバチーダを求めて)』は今聴いても新鮮(しかもおしゃれ)な名盤です。さらにそれを全編生演奏のアコースティック編成で再現した翌年のライブ盤『Acústico MTV』も刺激的!

Marcelo D2 – A Maldição do Samba (2004年のアルバム『Acústico MTV』より)

ファヴェーラ・ベース!MCソフィアとカロル・コンカ

ビリンバウの音色が鳴り響き、サウンドは再びベース・ミュージック調に。そこで登場するド派手な紫とピンクの髪色の2人がMC Soffia(MCソフィア)とKarol Conka(カロル・コンカ)。

MC Soffiaはサンパウロ出身の女性ラッパーで、なんと現在12歳!7歳から活動しており、人種差別など社会問題を告発した歌詞で注目を集めています。

Mc Soffia – Menina Pretinha

Karol Conkaはクリチバ出身の女性ラッパーで、現在のブラジルのベース・ミュージック・シーンを代表するアーティストの一人。2013年のアルバム『Batuk Freak』はブラジル的な要素にダブステップからトラップまで、世界各地の刺激的サウンドを盛りに盛り込んだ強烈な名盤です。

Karol Conka – Boa Noite [Official Video](2013年のアルバム『Batuk Freak』より)

トレーミ!エレクトロ・ギャングが乱入!

Treme Maracanã! 🎶🎖 #Rio2016 #Olimpiadas2016

A photo posted by Gang do Eletro (@gangdoeletro) on

色とりどりのアフロ頭の大群衆ダンサーが登場。その真ん中にド派手な光る衣装をまとって現れたのは、4人組グループ Gang do Eletro(ギャンギ・ド・エレトロ)。

Gang do Eletroは2008年に結成されたブラジル北部の都市ベレンのグループ。ブレーガ(Brega)と呼ばれる地元の伝統歌謡曲(?)をエレクトロニック化した「テクノブレーガ(Tecnobrega)」なるサウンドで、耳の早い音楽好きから熱い注目を集めています。
体をひたすらブルブル震わせる「Treme(トレーミ)」なるダンス?動き?がお約束で、会場でもひたすら「トレーミトレーミ」連呼するパフォーマンスを披露。

Gang do Eletro – Velocidade do Eletro
歌ったのはおそらくこの曲のエンディング部分。

ジョルジ・ベンの「パイス・トロピカル(熱帯の国)」

女優 Regina Casé(ヘジーナ・カセ)のスピーチを合図に流れだすのは、名曲「País Tropical(パイス・トロピカル)」。作曲者の Jorge Benjor(ジョルジ・ベンジョール)も登場し、Regina Caséとともに歌います。
Jorge Ben Jor – País Tropical (Áudio) – YouTube

Jorge Benjorはリオデジャネイロ出身のシンガーソングライター。ブラック・ミュージック~アフロ的な要素の強いファンキーでソウルフルでロックなサンバ・ベースのMPB…って言葉じゃ説明するのが難しい、独自の音楽性を持った偉大なアーティストです。1989年まではJorge Ben(ジョルジ・ベン)の芸名で活動していました。セルジオ・メンデスでおなじみ「Mas Que Nada(マシュ・ケ・ナダ)」も彼の作曲によるもの。

Jorge Ben Jor – Mas Que Nada

ブラジル選手団入場「ブラジルの水彩画」

選手入場のBGMはひたすらサンバ!そして最後、開催国ブラジルの選手団入場の際に流れたのが「Aquarela do Brasil(ブラジルの水彩画)」。Ary Barroso(アリ・バホーゾ)作曲のサンバで、1942年にディズニー映画に使われたことから世界的にも「Brazil(ブラジル※英語表記)」のタイトルで知られている名曲です。

Caetano Veloso, João Gilberto e Gilberto Gil – Aquarela Do Brasil – YouTube

これぞ珠玉のバージョン!ジョアン・ジルベルトがカエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、マリア・ベターニアと共演した1981年のアルバム『Brasil(邦題:海の奇蹟)』より。

オリンピックフラッグ掲揚の時の合唱曲はおなじみ「オリンピック賛歌(Olympic Hymn)」。さすがにこれはサンバ・バージョン…ではなく普通のオーケストラアレンジでしたね。

ウィルソン・ダス・ネヴィス登場!サンバ!

続いて現在80歳の Wilson das Neves(ウィルソン・ダス・ネヴィス)が粋な白スーツで登場。マッチ箱を叩いて打楽器にしたというサンバの歴史をオマージュしたパフォーマンスにあわせて少年ダンサーが踊ります。

Wilson das Nevesは1950年代からエリゼッチ・カルドーゾやシコ・ブアルキ、エリス・レジーナなど、数多くの有名アーティストたちのレコーディングに参加してきた名ドラマーで打楽器奏者、そして自ら歌も歌う偉大なサンビスタです。
ジャズ・サンバ・グループ Os Ipanemas(オス・イパネマス)のメンバーとしても活動していました。

Wilson Das Neves – Pick Up The Pieces – Brazil 45, number 19 – YouTube

1976年のアルバム『Som Quente É O Das Neves』収録のアヴェレージ・ホワイト・バンドのカバー。これ最高です。

カエターノ、ジル、アニッタによる「Isto aqui o que e?」

そしてそのままサンバのリズムに乗って柔らかな声で歌い出すのは Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)と Gilberto Gil(ジルベルト・ジル)。さらに若手女性歌手の Anitta(アニッタ)がそこに加わり、会場はカルナヴァル(カーニバル)へと突入していきます。

歌われた曲は、Ary Barroso(アリ・バホーゾ)作曲のこれまたサンバの定番「Isto aqui o que e?(イスト・アキ・オ・キ・エ)」。多くのアーティストによって歌われていますが、ジョアン・ジルベルトのライブのレパートリーとしてよく知られています。
João Gilberto – Isto Aqui O Que é – São Paulo – 1994 – YouTube

カエターノによるスタジオ録音版もありますが、オリジナルアルバムには未収録。CDでは2009年にBOXセットのボーナスディスクとして発売されたレア・トラック集『Certeza da Beleza』に収録されています。少々レア。
Caetano Veloso – Isto Aqui, o Que É? – YouTube

Caetano VelosoGilberto Gilはともにバイーア出身の偉大なアーティストで、1960年代にブラジル音楽の伝統と革新を同時に志向した一種の文化ムーブメント「Tropicália(トロピカリア/トロピカリズモ)」の中心となった存在。同郷の大先輩であるジョアン・ジルベルトに影響を受けたサンバ~ボサノヴァのスタイルに、当時の英米の先鋭的なロックの要素を取り込み、新しいブラジルならではの音楽を生み出しました。軍事政権時代にはその影響力の大きさに目を付けられ、ヨーロッパに亡命を余儀なくされていたことも。今なお現役で精力的な音楽活動を行っています。

カエターノ・ヴェローゾは今年10月に来日が決定しています!気になった方は是非!
関連記事:
11年ぶりの来日公演決定!カエターノ・ヴェローゾ 初心者向け入門ガイド

Anittaはリオデジャネイロ出身の現在23歳の女性歌手。2013年にメジャーデビューし、次々と作品をヒットさせて一躍人気スターに。ファンキ(ファンキ・メロディ)寄りのポップ歌手として活動しています。
最新ヒットはコロンビアのレゲトン歌手Malumaをフィーチャリングした「Sim Ou Não」。

Sim Ou Não – Anitta Feat Maluma

以上、開会式に登場した楽曲とアーティストのまとめでした。
筆者が認識できたものは可能な限り紹介しましたが、他にも使われていた曲や出演していたアーティストがあるかもしれません(気づいたものがあれば教えていただけると幸いです)。
サンバ、ボサノヴァからヒップホップ、ファンキまで、過去から現在までのリオの音楽風景を一気に詰め込んだような見応え・聴き応えたっぷりの内容!
気になったアーティストは是非、他の作品もチェックしてみて下さい。

リオ五輪の公式テーマソングもチェック!

ついでにリオ五輪の公式テーマソングなど、関連作品もチェックしておきましょう。

Olympic Games Rio 2016 Official Theme-Music: Alma e Coração – Thiaguinho and Projota

2016年7月3日にリリースされた、リオ五輪のオフィシャル・テーマ・ソングは Thiaguinho(チアギーニョ)と Projoto(プロジョタ)による「Alma e Coração(アルマ・イ・コラサォン/魂と心)」。
Thiaguinhoはサンパウロのシンガーソングライター、Projotaは同じくサンパウロのラッパーです。
そしてトラックを手がけたのはベース・ミュージックの世界で大活躍中のDJ2人組ユニット Tropkillaz(トロプキラーズ)!というわけでサウンドは完全にトラップ風味のファンキになっています。

Os Deuses do Olimpo Visitam o Rio de Janeiro

2012年8月13日、オリンピックの旗がブラジルに到着した日にあわせてリリースされたリオ五輪に向けてのテーマ曲「Os Deuses do Olimpo Visitam o Rio de Janeiro(オリンポスの神々がリオデジャネイロにやって来る)」は、Kassin(カシン)のプロデュースによるサンバ・ファンク。Arlindo Cruz(アルリンド・クルス)、Arlindo Neto(アルリンド・ネト)、Rogê(ホジェ)による作品で、Mart’nália(マルチナーリア)、Zeca Pagodinho(ゼカ・パゴヂーニョ)、Ed Motta(エヂ・モッタ)他、多数のアーティストが参加しています。

Vida do Viajante – Rio 2016 – Tema Oficial (Tocha Olímpica) [Olympic Torch Official Theme]

さらに聖火リレーのテーマ曲はこちら。日本でも人気の Roberta Sá(ホベルタ・サー)らが参加しています。

参加アーティストは Luan Estilizado、Bruno Cardoso (Sorriso Maroto)、Roberta Sá、Marcelo Jeneci、César Menotti & Fabiano、Koringa、Alexandre De Faria、Bruno Boncini (Malta)。

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